腸の抗炎症薬メサラジン臨床研究

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機能性消化管疾患のお腹の症状と炎症について、「ニワトリが先か、タマゴが先か」論争が盛り上がっています。

腸管感染症後(食中毒など)に過敏性腸症候群(IBS)に進展する人がいたり、大腸の炎症物質(サイトカインなど)の研究が多数報告されています。そこで、お腹に炎症をおこす親戚疾患ともいわれる、炎症性腸疾患(IBD)において、頻繁に使用される「メサラジン」がIBSに効くのか?それを調べた第3相臨床試験のお話です。

 因みにこのメサラジン、某首相が炎症性腸疾患の際に使用して効果がみられたという有名な薬です。  

IBSに抗炎症薬(メサラジン)は効くのか?

Randomised controlled trial of mesalazine in IBS.   GUT 2014;0:1-9

炎症性腸疾患(腸に高度の炎症が起きる状態)でよく使われる「メサラジン(mesalazine)」が、IBSにも効果があるか調べた大規模ランダム化臨床試験が報告されました。

方法:185人のIBS患者(イタリア人)をランダムにメサラジン800mgとプラセボ群に分け12週間内服し、その後12週間観察。(phase lll 研究)randomised, double-blind, placebo-controlled, parallel-arm, multicentre trial designed. IBSはRome lll診断基準にて診断。下記についてスケールを用いて測定。

  • IBSの症状
  • お腹の痛み
  • 不安や気分の落ち込み、体調に関する心理検査

結果:ほぼ全てにおいて、薬群とプラセボ群で有意な差がありませんでした。唯一有意差がみられたものは、フォローアップ時において、反応率>75%グループのみ、プラセボを上回っていた(p=0.032)。

結論:メサラジンのIBSに対する有意な効果は認められず。

 

なんだか煮え切らない感じの結果ですが、以前も似た小規模研究が幾つかあり、追従する感じの結果でした。さておき、この論文の面白く感じた部分を2点ばかり。 

 

きれいなデザインの臨床研究

非常に練られた臨床研究で「randomised, double-blind, placebo-controlled, parallel-arm, multicentre trial designed」となっています。人間は正直なもので、偽薬か本物かわかってしまうと、どんなに客観になろうとしても、患者も医者も無意識に引きずられると言われています。いかに「蓋をあけるまでわからない」状態で研究デザインを組むかが重要です。「バイアス」効果とも言いますが、これを出来るだけ抑える研究になっています。

実際に、被験者さんの協力を頂く研究は、急なお互いの都合などで日程が変わることもしばしばです。番号と準備した薬が入れ替わらないように最新の注意を払って行う、外来で話を聞く日程を調整するなど、研究裏側は結構大変だったのではないかと。最後に誰が内服群かオープンする過程は研究者側はちょっとドキドキです。

 

IBSとプラセボ効果:IBS研究が難しい理由の一つ

IBS患者は、通常の臨床研究と比べて、「プラセボ効果」が高いといわれています。IBSはイメージや暗示に弱いのか。。筆者らは、期間中副作用確認など含めて、2週間毎に受診したりなど手厚い診療体制で安心した患者が多かったことが影響したのか、また重度のIBS患者にもっと参加してもらうべきだったと述べています。

一箇所有意差が出たところについて、本当に体の中で薬に反応していたとすれば、IBSの中にメサラジンが効くクラスター(集団)があるのかもしれません。IBSの原因は多岐に渡るので、どのような人が腸の炎症型なのか、それらを見分けられる研究がもっと進むと面白いですね。(因みにこの研究チームはそれらが強いところ)

 

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