「むむ、お腹の痛み来襲か?」の脳活動

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お腹の痛みやトイレに行きたい感じ…

これらはお腹からの信号が脳に届いて、私達に「感覚」として知らせてくれます。この時の脳活動について、MRIやPET、脳波などを用いて数多く研究されています。

 今回取り上げる内容は、お腹の違和感を感じる「直前」の脳活動。研究の手法上、被験者に「内臓刺激を加えますよ、でもランダムなので、今回は刺激がないかもしれません」こう言われた時の脳活動についてです。不快な大腸刺激がくるかこないか、その不安な時に脳のどこが活動するのか。またその時の自律神経(心拍変動)のゆらぎは変わるのか。健常者を対象にした欧州での研究です。

 

Uncertainty in anticipation of uncomfortable rectal distension is modulated by the autonomic nervous system – A fMRI study in healthy volunteers

Neuroimage 2015;107:10-22

方法:15名の健常者(男性6名、平均年齢24歳 range 21-43)に対し、”大腸刺激” “刺激が来るかわからない” “刺激なし” のパターンに分けてfMRIを撮像。同時に心電図を用いた心拍変動を計測。

結果:”刺激が来るかわからない”、つまり「不安予期」の時にsubgenual anterior cingulate cortex(sgACC:膝下部前帯状回)、ventromedial prefrontal cortex (vmPFC:腹内側前頭前野)の有意な活動を認め、痛み関連の不安スコアとも相関していた。またその際に、内臓刺激時に活動すると言われている、扁桃体、島、視床、二次体性感覚野などの活動はむしろ抑えられていた。中枢での自律神経活動ネットワークも、これらの脳活動と関連していた。

 

不確実な「不安・恐怖」と明らかな「不安・恐怖」

この研究で興味深いのは、生命の危機を感じるほどでない「なんとなく」と、実際に大腸刺激している時の「明らかな」ネガティブな感情は、それぞれ別の脳が活動していたということ。更に、不安などで活動することがいわれている扁桃体は「なんとなく」の時は抑制されていました。機能性ディスペプシア(FD)や過敏性腸症候群(IBS)といった、お腹とストレスの症状に、この扁桃体が関係していることが報告されています。

 

この論文から垣間見える未来

人間が生存していくのに、この「不安・恐怖」は必要だったと言われています。何事も果敢に飛び込んでいったら、時に生命の危険に会うこともあるからです。しかし、ほんの少しの感情で毎回強い不安を煽りまくっていては、脳は大切な時に強弱がつけれなくなってしまう。そこで、弱い刺激の時と強い刺激の時で、別々の脳が働くようにし、更にそのお互いを拮抗するようにコントロールしている仕組みがありそうだ、というこの論文。IBSやFDはこのスイッチが黄色信号を飛び越えて、赤信号に入りやすくなっているとしたら、、その大元はどこにあるのでしょうか。

 

このような詳細な脳研究が進んで来ています。しかし、これをどうやって私達の生活に取り入れればいいかについて、エビデンスのある治療法は多くありません。ただ、「不安」になりすぎるのも宜しくないということ。そうは言うのは簡単ですけが…。

 

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