ストレスはお腹に悪い?の正体

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「明日大きな試合がある」「気が重い取引先なんだよなあ…。」こんな時に、お腹を壊し易いイメージあるかもしれません。

fukutuu15-1「ストレス」という言葉はとても有名ですが、掴みどころがないですよね。しかし、「嫌な気分」の時に頭の中で何らかスイッチが入り、物質が作られ、体に送り出されているから、様々な症状が出てくるのです。科学的に「ストレス」のメカニズムを解明すべく、その「物質」を探す研究が繰り広げられてきました。

 

アドレナリンを刺激する物質が別にある?

高峰譲吉が1900年に牛の副腎からアドレナリンを発見しました。その後、情動と自律神経、アドレナリン系の研究が進み、どうもこれらを刺激する物質が別にありそうだと研究者達は気付き始めました。その後1981年Science誌に、その正体を掴んだ論文が掲載されました。

 

 

(Science 1981;213:1394より)

その名は「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(Corticotropin releasing hormone:CRH)」。長いので、CRH(CRFという人もいる)と呼ばれることが多いです。実はこの論文、物凄い発見なのですが、論文の要約(abstract)はたったこれだけ。41個のアミノ酸を見ろ!これが正体や!、そう言わんばかりの導入部分です。

 

嫌な気持ちになるとCRHが脳などで作られる

このCRHは脳の中央部にある視床下部で作られ、下垂体で副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を放出し、血流に乗って遠く離れた副腎でコルチゾールを作ります。きっと高校で生物選択だった人は何となく記憶にあるのではないでしょうか。因みに、CRHやコルチゾールは、うつ病、不安症と関連することがいわれています。また同時に、CRH関連また全身にCRH受容体があることが分かり、内臓でも様々な反応を示すことがわかってきました。

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CRHを注射すると、過敏性腸症候群の人のお腹がモニョモニョ動き出した!

「お腹が弱い人」はストレスがかかると、悪化しやすいことが言われています。そこで、過敏性腸症候群(IBS)にCRHを注射してみたところ、十二指腸と大腸運動が一気に増えました。脳で主に作られるストレスホルモンが、腸でも影響する。まさしく、脳と腸の関係「脳腸相関」を示した研究でした。一方、全身のCRH受容体を押さえる薬を投与後、つまりはCRHホルモンがお腹を刺激しにくい状況を作ると、IBSの腹痛は和らいだのです。

 引用:Gut 1998;42:845-849,  Gut 2004;53:958-964

この研究から、IBSにCRH受容体拮抗薬が効くのではと思う方もいらっしゃるかもしれません。いくつか創薬の研究もされていますが、現時点で非常に高価であること、また体の根幹に関わるホルモンであることから、長期連用の副作用などわかっておらず、まだまだ臨床利用は先と思われます。研究が進むと、新しい道が開けてくるのかもしれません。

 

CRHは古代生物が生き延びるために備えたのも魚類や昆虫にも存在

このCRH、非常に多くの生き物が持っています。昆虫や魚類を始め、脳形態がそこまで進化していない生物にまで及びます。生き物は何か食べないと生きていけません。いわば「生きる」ための情報収集・反応装置がお腹にあったのかもしれません。

 

また、このCRHが作られる脳部位のお隣には、体に水をため、陸上に上がって生きていけるきっかけとなった「バソプレシン」というホルモンや、愛情や集団生活に関係する「オキシトシン」というホルモンがあります。ヒトが生きていくに辺り「適度」のストレスは必要だったのかもしれません。IBSはヒトが進化の過程で備えた、新たな力になったりする日も…。くるのかなあ。。

 

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