過敏性腸症候群(Irrtable Bowel Syndrome、以下IBS)は、腹痛とその際の便性状異常をしめす機能性消化管疾患です。おおよそ若年成人の10-15%いるとされます。
5-6人にひとりはいるイメージだね。
ところで「便性状の異常」ってなんだい?
医学用語は普段使わないような難解な言葉もあり、わかりにくくてすいません。ここでいう「便性状の異常」とは、調子良い時に出てくる「バナナ様の便」ではなく、「下痢」というような軟らかい〜水様の便(軟便)、もしくは「便秘」といった硬い便になることです。
さてIBSの症状とはどんなものでしょうか。まずは以下、当てはまるものがあるでしょうか。
・週に1回以上トイレに駆け込みたいほどの腹痛がある
・その時に軟らかい便かコロコロ便がでる
・ある程度便がでれば、腹痛はよくなる
これが3ヶ月以上、慢性的に繰り返している。
過敏性腸症候群(IBS)の診断基準
ここでは私達が日常診療で使う診断基準を詳しく見ていきましょう。過敏性腸症候群の診断基準は、一般的にRome診断基準がつかわれます。これは機能性消化管疾患の世界委員会であるRome委員会が作成し、世界各国の言語に翻訳されています。数年に1度、最新の研究内容に照らし合わせ新しくなります。現在は2016年に出されたRomeⅣが最新です。
まず定義の項目を確認します。「排便頻度の変化」というのは、腹痛があるときは「トイレに駆け込みたい」状態となり日に数回排便があるような状態です。普段腹痛もなく調子いいときは日に1回程度という場合と対照的ですね。
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IBSの診断、その前に!他の病気がかくれていることも。
IBSは日常生活での患者さんが困っている状況を問診して、診断へすすめていくと思われがちです。私達医師は、IBSを疑った際に「他の疾患が隠れていないか」と、問診や身体所見の情報に神経を研ぎ澄ませます。
例えばIBSのような症状を示す疾患として、大腸癌や大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患といった他の消化管疾患を除外する必要があります。通常IBSでは発熱を生じませんが、数ヶ月おきに発熱と腹痛を生じている場合は家族性地中海熱などの可能性も考えます。
また消化器疾患だけではなく、甲状腺機能異常症や糖尿病といった内分泌疾患、SLE(ループス腸炎)などの膠原病、そしてパーキンソン病を含めた神経疾患などが背景にある場合もあります。これらを調べるために、採血やCTを含めた画像検査、そして内視鏡検査を行うこともあります。
定期内服薬などの作用により、消化管の痛みや便の形の変化などが生じることもあり、現在服用中のお薬情報などもうかがいます。