若手医師達との会話で「40歳以上で便潜血検査が検診で必須項目だと思っていました」との声が。実は医師も、健診の必須項目や、労働安全法に基づく健康診断、更に自営業者の経費負担など、正式に教わる場はありません。
医師は外来で「検診受けましたか」と聞くことがあるかと思いますが、「任意」項目の何を受けたか、しっかりと聞く必要があります。
私の場合、専門柄「便潜血」を健診で受けたか、患者さんに確認することがあります。特に中小企業や自営業の方で、任意項目を受けていないことが多い印象があります。
【一般健康診断項目】
(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう」pdfより)
上記のように、便潜血検査は必須項目に入っていません。
中小企業や自営業者でなぜ便潜血検査がされにくいのか
労働安全衛生法 第12条で50人以上の事業所は「衛生管理者」を置くことが定められ、産業医選任も義務となります。その場合、定期健康診断受診や結果について医師の目に入りやすく、適切な指導を受けやすくなります。
一方で、中小企業や自営業の場合、経費で健診費用が負担できないなど、任意項目受診を迷われる場合も見受けられます。
大腸癌健診(便潜血検査)でどれくらい大腸癌死亡リスクが減るのか
3件の無作為化比較対照試験によると、欧米で広く用いられている便潜血検査化学法を毎年受診した場合には33%、2年に1度受診した場合でも13〜21%大腸がん死亡率が減少することがわかりました。わが国で広く用いられている免疫法については、症例対照研究によって、1日法による検診を毎年受診することで大腸がん死亡が60%減ることが報告されています。
また便潜血検査は、排便時の便を一部取るだけなので、身体への危険がありません。ほんの少しの手間だけで大きく死亡リスクを減らせられるのです。
大腸癌健診(便潜血検査)を特におすすめしたい方
・40歳以上
(その中でも特に)
・メタボリックシンドロームに該当する方
・大腸癌の家族歴がある方
便潜血検査は大腸癌を絶対見つけられるわけではありません
「絶対に完璧に病気を当てられる検査」はまずありません。以下のようなことがあったら、是非とも医師への相談をおすすめします。またこれらは、腹痛などを伴う必要はありません。以下に気づいて受診され、早期大腸癌が見つかった方々は「普通の体調だった」「特に腹痛など、他の症状はなかった」とお話されます。だからこそ、早く見つけることに意味があると思います。
・便が黒っぽい?
・赤い血がまざってる?
・排便の際に、トイレットペーパーに血液らしきものがついている
・便器の水が少し赤っぽい
・もともと痔があるけど、出血が目立つ
など。
もし上記があって、検査をしても異常がなかったら、それでいいんです。ご自身で「きっと大丈夫だ」という感覚はときに手遅れになることがあります。大腸内視鏡検査になったとしても、最近は麻酔などで苦しくない検査方法で行う病院も増えています。
自身、悔しい場面に出会ってきたからこそ、是非皆さんに知っていただければと思います。