過敏性腸症候群? 腹痛? 熱でるの?

おなかいたいくて、熱がでてきた。

いつもはトイレに駆け込んでただけだけど、今回は熱も?

「この症状、過敏性腸症候群(IBS)だと思うんですけど…熱ってでますか?」

このような質問を患者さんから受けることがあります。おなかが痛いと熱がでる、よくありそうでいて、実は様々な疾患を考える必要もあります。IBSは「発熱があってもいいのか」に切り込みつつ、おなかが痛い時に「発熱」がある場合どのように考えたらいいか、堀りすすめていきましょう。

目次

「おなかがいたい」と「熱がある」

  1. 急に症状がでてきたとき

「お腹が痛い」「発熱」がある、という症状を聞くと、腹部で炎症が起きている可能性を疑います。(※発熱は医学的には37.5℃以上を指します。しかし元々平熱が低い方は通常の体温+1.0〜1.5℃程度の上昇を参考にしてください)いわゆる、ウイルス性疾患に加えて、感染性腸炎や、胆嚢・胆管炎、膵炎、大腸憩室炎、急性虫垂炎、腸閉塞、イレウス、消化管穿孔など…消化器関連の臓器に感染・炎症が起こる場合、腹痛に加え発熱を引き起こすことがあります。

しかしこれらの症状、消化器系の臓器が原因とは限りません。例えば腎・泌尿器系、女性であれば卵巣や子宮系の疾患なども症状によっては考えます。また胸膜炎などの呼吸器疾患や心血管系の病気で生じることもあります。

ここ数日〜数週間で一気に悪化した場合、特に「これまで経験したことのない痛み」「どんどん悪化している」などのケースや、糖尿病や自己免疫性疾患など感染への抵抗性が弱い場合は重症化することもあります。早急に医師に相談してください。

  1. 発熱(微熱)を数週間〜数ヶ月にわたり繰り返す

「数年来、時々下痢と腹痛を繰り返していて、最近は下痢の回数も増えて微熱もでるようになった」「ここ半年くらい下痢が目立つようになり、最近は疲れやすく、37℃後半の熱が出ることも」「2−3ヶ月に1回、2−3日続く38℃台の熱と腹痛を繰り返している」などといった、数ヶ月以上続く(繰り返す)お腹の症状と発熱に関する相談も時々あります。

まず慢性的な消化管への炎症状態を疑います。潰瘍性大腸炎やクローン病など消化管を介した免疫の戦いによって炎症が生じる炎症性腸疾患、また悪性疾患も年齢や状況に応じて考慮しなくてはなりません。また頻度はそう多くはありませんが、ベーチェット病、ループス腸炎、家族性地中海熱といった自己免疫性疾患も鑑別に上がります。その他、甲状腺機能異常症といった内分泌疾患、リンパ腫といった血液疾患でも生じることがあります。

このように「おなかの症状」は必ずしも原因が消化管にあるとは限りません。状況に応じて、内視鏡検査に加えて、詳しい採血検査や画像検査などが必要になる場合もあります。

「発熱」と「下痢」があれば腸炎?

発熱やおなかの痛みに加えて、下痢があると「消化管の病気」と思われることが多いのではないでしょうか。実際に感染性腸炎などではこれらの症状を示すことが多いです。(ウイルス性腸炎は熱が出ないこともめずらしくない)

しかし「高熱」の状態では、体内での消化の状況が変化したり、食欲が低下することもあります。また熱冷まし系の薬剤や抗生剤などで消化管運動が変化することもあります。よって、様々な病気で全身状態に大きな変化を生じると下痢を生じることもあり、必ずしも「下痢=おなかの病気」とは限りません。

日に5回以上の激しい水様便や、嘔気嘔吐症状がともにある、食事や飲水もままならない…など日常生活に差し障る症状の場合は、早めの医師への相談をおすすめします。

過敏性腸症候群は発熱することがあるの?

過敏性腸症候群(IBS)の病態は「炎症」は深く関連していないとされています。そのため基本的に「発熱」はみられません。IBSは消化管粘膜に強い炎症を生じず、採血検査でも白血球やCRP、血沈といった炎症所見も正常範囲であることが一般的です。

発熱があれば「IBSではない」ということ?

かかっている病気は1つ、とはかぎらないよ

もともとIBSの人が、他の病気にかかって熱が出ることはあります。たとえば、カンピロバクター、サルモネラ腸炎などは、それらの菌が付着した食べ物を食べることによって生じるので、もともとIBSの方でも感染性腸炎になることはあります。その他、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患を発症することはあります。

「慢性的な”○○”という病気に、今回”△△”という病気が合わさった」、ということは私達内科医は日常的に経験し、珍しくありません。「長らく〇〇という症状が多かったけれども、□頃から(□週間前など)△という症状が目立つようになった」など、ざっくりとした時系列を診察時にお話いただくと、診療に役立つことも多いです。

「おなかが痛い」は消化器系の臓器だけではなく、本当に全身の様々な疾患が背景に潜んでいます。ひとりよがりでの判断はせずに、気になる場合は医師に相談してください。

腹部症状に加えて「発熱」があるときは、早めに医師へ相談を

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