お腹の調子は、排便の回数や便の性状として表れます。便が柔らかい時は水分が多く、硬い時は水分量が減っています。水分の他に、便成分は何か違いがあるのでしょうか。
便は食事内容によって大きく3つのエンテロタイプに別れるとされています (Nature, 2011) 。中でも、腸管運動や便性状に関連が深い、タンパク質や動物性脂肪摂取が多い群はRuminococcaceaeが多く、一方、炭水化物や食物繊維が多い群はPrevotellaが多くなっています。Bacteroidesは日和見菌とされ、脂肪吸収などを助けていると言われています。
今回ご紹介するのは、ブリストル・スケールという便の柔らかさ、硬さをレベルで表現し、それらと便の菌構成はどうなっているのか調べた論文です。
※ブリストル・スケール:0〜7の数字で表現。数字が少ないと固く、高いと柔らかい。
便性状は腸内細菌叢の種類と構成、エンテロタイプと細菌増殖速度と強く関連する
Gut. 2015 Jun 11.
<参加者>
・53名、健康女性 (20-55歳、平均42.5歳)
<方法>
・便を採取し、すぐに冷凍保存。16S rRNAをIlluminaで解析
・菌種、Bacteroides/Firmicutes比、エンテロタイプ、ブリストル・スケールについて関連を解析
<結果>
・硬便ではRuminococcaceae-Bacteroidesが多く、軟便になるほど、菌種構成は少なくなり、Prevotellaの割合が増えた。(菌種構成が多いほうが良いとされている)
・Ruminococcaceae-Bacteroides型エンテロタイプでは、Methanobrevibacter やAkkermansia量が便の硬さと相関した。一方、軟便ではOxalobacter, Butyricimonas そしてBacteroidesが増えていた。
・Ruminococcaceae-Bacteroides型エンテロタイプでは、軟便になるにつれて細菌の成長ポテンシャルが高くなっていた。Prevotella型では便性状による差はみられなかった。
今回の研究から、便の菌種構成と、便の軟らかさの関係が明らかになりました。便秘型は、腸管滞在時間が一般的に長いとされていますが、腸管運動研究によると必ずしも当てはまらない場合があります。エンテロタイプは食生活や文化とも密接に関連していたり、体質に合わせた治療法の開発など、今後の研究が期待されます。