先日JAMA誌で流れていた、米国癌協会(ACS)の大腸がんスクリーニング基準のビデオです。
日本の一般的な検診とは異なり、年齢別、状況別に推奨度を出しています。検査種別は沢山表示されていますが、ここにでてくる「FOBT」はいわゆる「検便(便潜血検査)」のことで、「Colonoscopy, sigmoidoscopy」は内視鏡検査のことです。残り、大腸癌DNA検査やCTについては、値段が高かったり、精度の問題もあり一般的ではありません。
以下大まかに3点です。
1)85歳以上では、検査のリスクのほうが、もし精密検査や大腸癌が見つかった時の危険度より高い
2)75-85歳では、過去5年以内に検査をして、ポリープを含めた異常がなければ、検査の必要性は低い。また、もし大腸癌が見つかった際に、手術や抗癌剤治療に耐えられる人を対象とする。(他の重篤な疾患がある場合は、検査や大腸がん治療がリスクとなることがあるため。)
3)一応50歳以上を適応としているが、できれば40歳代からの検診受診を推奨する。
日本では現在、市町村検診の多くで大腸がん検診の年齢上限はありません。例えば、90歳以上の方でも、一斉に行政から個人宅に検査キットを郵送して便潜血検査を行う地域もあります。最近は内視鏡検査、治療なども進歩してきましたが、患者さんにとって中々の負担ではあります。一方で元気な高齢者も多く、年齢で一概に検査適応を区切るのではなく、個々の状況を見て判断しているのが現状と思います。
一方で、50歳以下の方について、米国は「40歳代からの検査が望ましい」と述べているのに対して、先日以下のニュースが出ていました。
日本では40歳代の大腸がん検診は「過剰診断」「不要な治療を誘導する」として、50歳代以上に引き上げを検討する、との内容です。30-40代で大腸癌になる方もいます。また最近は炎症性腸疾患などの患者さんも増えてきています。
早期にポリープや癌を見つけることで、手術をせずに内視鏡治療ができることもあり、その後の転移などのリスクはぐっと低くなり、生命予後は向上します。また40歳代は家族や仕事を抱えている世代でもあります。その世代の検診をなくしてしまうと、進行癌になってしまってから見つかる症例が増えることが予想されます。
「過剰診断」「不要な治療を誘導する」について、若年層だけではなく、高齢者層についても議論が必要なのではないでしょうか。
年齢により命の軽重をつけるのは好ましくないとも思います。一方で医療資源や有限で、国の財政との兼ね合いも考慮しなくてはなりません。みなさんは、どのようにお考えになるでしょうか。