1日に体のリズムがあるように、腸の運動にもリズムがあります。このパターンを知っていると、おなかの不調に対処しやすいかもしれません。
「なんで朝の通勤電車でお腹痛くなること多いんですかね?」
「寝ている時に、お腹の痛みがでることは、そういえばないですね」
お腹の動きにも、体と同じようにリズムがあります。何となく、ご自身のパターンをお分かりの方も多いのではないでしょうか。過敏性腸症候群(IBS)でも「腸の動き」に関する研究が多数なされています。
腸の動きは、小刻みに動く運動から、絞りだすように収縮して肛門側に押し出す運動まであり、大きく3種類に分けられています。これまでは肛門から細い内圧を測定できるカテーテルを入れて観察していました。最近では、研究段階ですがカプセル式の内圧計も出てきています。しかしカプセル式ですと、同時に全体の観察が出来ないため(カプセルの居る場所のみ)まだまだ課題が残っています。
24時間の腸の動きを観察
とりあえず、1日3回食事を食べて、夜は寝て、所謂「普通」の状態における腸の運動を観察してみよう。ということで、かれこれ30年ほど前、GUT誌に下記論文が掲載されました。
“Twenty four hour manometric recordins of colonic motor activity in healthy man“
(Gut 1987;28:17-25)
この研究は14人の健康な方に、肛門から横行結腸まで内圧カテーテルを留置し、朝食、昼食、夕食、そして睡眠中を含めた大腸運動を24時間観察したものです。食事以外の時間は、カテーテルがずれるといけないので、基本的にベッドに横になっています。その時の結果が下図です。縦軸が腸管運動を表しており、高いほど腸が動いている状態を示します。横軸は時間です。昼12時から翌日昼までです。
朝、食事、睡眠がキーポイント
大腸の場所による違いはあれど、パターンが見えてきます。
<大腸運動が亢進している時>
- 起床直後から朝食後
- 昼食、夕食後
<大腸運動が抑制されている時>
- 睡眠中
朝の通勤電車で腹痛に襲われ易い理由は、朝の大腸運動がより亢進している状況かもしれません。一方、便秘気味の方は、朝にトイレに行く時間が十分に取れておらず、排便のサインを見逃してしまっている可能性も考えられます。
大腸運動は、腸の筋層の信号伝達から腸を結ぶ神経叢、更に自律神経を経由して脳からの刺激など、多彩なネットワークにより調整されています。過敏性腸症候群(IBS)は睡眠中の交感神経活動が、健常者より高いことや(おなかと睡眠)、更にはアルコールが睡眠やお腹の動きに影響することが報告されており(飲み会のあと、よくお腹下すんだよね)、「朝のお腹」が気になる方は、前日夜のメンテナンスが効くかもしれません。