乳酸菌は胃酸に耐えられるの?

多くの菌は胃酸に弱いことがわかっています。せっかく摂取した乳酸菌、出来る限り腸に届けるには。今後のヒントになるかもしれません。

 「ヨーグルトの乳酸菌は胃酸で死んでしまうって聞いたけど、実際どうなの?」

そんな友人との何気ない会話からでてきた疑問。

胃酸はpH1~2程度の強い酸で、食べ物の消化や外部からの入ってきた菌を殺菌します。胃酸のおかげで、レアのステーキや、お刺身、生野菜など、お腹を壊さず美味しく食べることができます。

さて、昨今流行りのプロバイオティクス(※)や乳酸菌など、これらも細菌の一種です。腸に辿り着くまでに胃酸の関門をかいくぐることができるのでしょうか。

※プロバイオティクス:十分な量を摂取したときに、有用な効果をもたらす生きた微生物。乳酸菌もこの中に含まれる。

banana yogurt

 

食事を摂ると、胃酸が食物に混ざることで、胃の中のpHは上昇(酸は弱くなる)します。そのため、ヒトの体内で細菌の生息を調べる研究は難しく、不明な点が多くありました。そこで、食事や、胃酸の変化、そして胆汁変化を出来るだけヒトに近い形になるように装置を設計し、プロバイオティクスの生存を調べた研究があります。今回はその論文をご紹介します。

 

ヒト上部消化管類似モデルによるプロバイオティクスの研究

A dynamic model that simulates the human upper gastrointestinal tract for the study of probiotics.

Int J Food Microbiol 2005;99:287-296.

 

<方法>

装置:

【胃のモデル】

食事液とHClを準備し、ペリスタポンプを使用してビーカーに入れていく。このビーカー内が胃のモデルである。食事の注入スピードとpH変化を計算して、HClによりビーカー内のpH環境をヒトに似るように調整する。

【十二指腸のモデル】

胃の反応が少し経った後、胃モデルのビーカーからペリスタポンプを用いて、液体を十二指腸モデルのビーカーに送り込んでいく。その際に胆汁酸液と、NaOH液を送り込みながら、ヒトの環境に似せる。(十二指腸内はアルカリ性に傾くため)

調べた菌:

Bifidobacterium longum (RW-002), Bifidobacterium infantis (ATCC 27920G), Bifidobacterium animalis (ATCC 25527, RW-004),

Lactobacillus acidophilus (ATCC 4356), Lactobacillus johnsonii, (NCC 533 ;La-1), Lactobacillus rhamnosus (ATCC 53103; GG), Lactobacillus kefir (IM002), Lactobacillus kefirgranum (IM014), Leuconostoc mesenteroides (IM082)

<結果>

・pH2.0で90分生き延びた菌はRW004, 4356, La-1,  25527であった。

・胆汁酸下では、IM014, 27920Gが生き延びることができなかった。

・胃モデルで90分生き延びた菌は、RW004, 4356, La-1, 25527であった。

総合的にみて最も生存できた菌はBifidobacterium animalis (ATCC 25527)と Lactobacillus johnsonii (La-1 NCC 533)であった。

 

胃の中で生き延びれる菌と、そうでない菌

菌の種類によって上部消化管で生き延びられる菌が異なっていました。生き延びられたとしても、大幅に減少したものも多く、プロバイオティクスは胃酸環境にそこまで強くなさそうです。

今回の研究はあくまでヒトの環境に「似せた」モデルであるため、私達の身体でも同じことが生じているかは断言できません。食事や胃の他の分泌液、ピロリ菌感染の有無などで多少の差は出てくるかと考えます。

 

日常生活にこの研究を活かすなら

ヒトは食事を食べると、胃の中のpHは5程度まで一気に上昇します。酸が弱まれば、これらプロバイオティクスにとっても生きやすい環境になるはずです。もし、ヨーグルトや乳酸菌製剤を摂るなら、空腹時ではなく、食事中や食後が良いのかもしれません。

因みに今回の研究で使われている菌には、現在某乳酸菌製剤や、某ヨーグルトで用いられているものもあります。記事の中立性のため、ここでは商品名をだせませんが、御興味ある方は探してみても面白いかもしれません。

 

奥が深いプロバイオティクス。静かな生き物だからこそ、彼らの声を聞く。そんな研究を今後もご紹介していきます。

 

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